腫瘍について

皆さんと共にお過ごしのペット達、生活環境の変化や予防の徹底化により、
感染症などのリスクが少なくなる事で、昔に比べてペットも長生きをするよう
になりました。それに伴ない、人と同じく腫瘍性の疾患に罹患するペットが
増えてきています。ここでは、腫瘍性の疾患とその治療について、ペットの
飼い主さんに分かり易く、説明したいと思います。
医療用語的には適切ではない表現も含まれると思いますが、飼い主さんの
理解度を高めるための表現になりますので、ご了承下さい。

 正常な細胞の遺伝子が破壊・損傷する事により異常な細胞に変化し、細胞が異常に増殖
 するようになってしまった状態。悪性度の高い腫瘍では周囲の臓器を浸襲することに
 よりその臓器の機能を低下させたり、血液やリンパを介して離れた臓器に転移を起こし
 たりするので、生命活動が続けられなくなる。
 1)細胞動態(良性か悪性か)による分類では

    良性腫瘍:組織内への浸潤や他の臓器への転移がない腫瘍
        周囲の組織への直接的な悪影響は少ないが、大きくなり過ぎると他の臓器を
        圧迫したり、機能的な障害が出てしまうことがあるので、増大傾向がある
        なら早期の切除が望まれる(手術のキズが小さくて済む)

    悪性腫瘍:まわりの臓器への浸潤や離れた臓器への転移がおこる腫瘍
    〇癌腫(上皮系の腫瘍で○○癌と呼ばれ肺癌や肝臓癌、腎臓癌や膀胱癌など)
    〇肉腫(非上皮=間葉系の腫瘍で○○肉腫と呼ばれ血管肉腫や骨肉腫、線維肉腫など)
        
   *見た目や触診では良性の腫瘍と区別する事は出来ない。
    診断を確定するためには、基本的に
病理組織検査等が必要である。

 2)組織学的(どこから発生したか)な分類では

    上皮系腫瘍:体表面を覆う表皮や臓器・胃や腸などの粘膜、外分泌腺の腺房細胞や
         内分泌腺の腺細胞などから発生した腫瘍で、悪性の場合○○癌と呼ばれる

    間葉系腫瘍:上皮以外、筋肉や骨などから発生した腫瘍や血液・骨髄の腫瘍で、
         悪性の場合○○肉腫と呼ばれる。

@問診(年齢や性別、増大傾向、既往歴)などにより悪性腫瘍の可能性をチェック

A身体検査で今までの病歴や腫瘤の大きさ、増大速度、体表リンパ節などをチェック

B
血液検査尿検査などにより全身状態のチェック

C
X線検査超音波検査などの画像診断により、腫瘤やリンパ節の状態、遠隔転移の
 有無などをチェック


D腫瘤や
付属リンパ節の細胞診検査・組織検査などで特徴のある腫瘍かどうか?
 遠隔転移があるかどうかチェック

 

TNM分類により総合的に評価し、ステージ確認を行い治療方法を決定する
  病理検査等で
グレードが決定される事により、予後の推測を行う。
  
  大きく分けて3つの治療目的があるので、それによって治療を行います。

 @根治療法: 根治(完全に無くす)を目的とした治療

A緩和療法: 根治は無理だが治療する事によりQOLの向上を目的とした治療

B対称療法: 根治は無理だが治療する事によりQOLの維持を目的とした治療

  1)外科療法:
    外科手術には必ず麻酔が必要になりますが、腫瘍を摘出する事で最大の減容積効果
    (腫瘍を減らす効果)を得る事が
出来ます。腫瘍細胞は自己を守るために患者の
    免疫システムを抑制する物質を出す事が知られていますが、減容積をする事で
    患者の免疫力が上昇する事も考えられます。

      最初の手術が治癒における最大のチャンスと言われています。目的に応じて出来る
    だけ広範囲に切除することもあるので機能的な障害が出てしまう事もあります。
    その点をどう考えるかは、ペットの性格や生活環境に応じて、飼い主さんと相談し
    治療を行っていきます。


  2)化学療法:
    体内に
抗がん剤を投与する事により、他の細胞より反応性の高い腫瘍細胞(分裂の
    盛んな
細胞)にダメージを与える。
    がんの転移防止には最も効果が期待できる治療法であるが、全身の一般の細胞にも
    ダメージを与えるため、分裂の盛んな細胞(骨髄、皮膚、胃腸)では様々な障害
    (副作用)が出る事も考えられる。


  3)放射線療法:
    
放射線を照射する事により、細胞のDNAを損傷・破壊して腫瘍細胞を死滅させる
    
未分化な細胞ほど照射による反応性(⇒破壊)が高く、脳や心臓など体内の臓器に
    部分的に照射することも可能である。
    デメリットとしては、たとえ同じ照射量でも
度の大量照射より数度に分けての
    分割照射の方が、副作用が軽減するので、その回数分麻酔が必要である。
    専用の放射線照射装置が必要なので、
放射線治療を行える施設は限られている

  4)免疫療法:
    もともと生体の持っている免疫応答システムを刺激する事により、生体の防御
    機構を
向上させ、がん細胞を退治しやすい状況にする。
    非ステロイド系抗炎症薬を使用したBRM療法や免疫刺激物質である様々な
    多糖類を含む食品、血管の新生抑制を示すサメ軟骨製剤などがある。
    最近では採取した自己のリンパ球を活性化し
体内に戻す方法なども考案され、
       一部の施設で行われています。当院では現在
非特異的免疫療法を行っています。

  5)温熱療法:
    腫瘍細胞は正常な細胞と比べて熱に弱いという性質を利用し、ラジオ波を体内に
    入射
して細胞レベルの振動を起こして加温します。腫瘍細胞を一定時間暖める事により、
      熱に弱い腫瘍細胞に対して死滅効果が出てきます
      放射線療法や化学療法との併用療法(ハイパーサーミア)は温熱療法単独よりも高い治療
      効果を出せることが期待されています。
        
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