1)オスの場合
オス特有の攻撃性やマーキングやマウンティングなどを抑制する事が出来る。
ただし、性成熟が起こりマーキングなどの行為を憶えてしまってからの手術では、
術後にこの様な行動が習性として残ってしまう可能性はあります。
男性ホルモンを生産している睾丸を摘出するので、精巣の腫瘍やホルモン依存性の
病気(前立腺肥大症や肛門周囲線種など)を予防する事が出来ます。
2)メスの場合
メス特有の徴候である発情(出血を含む一連の生殖可能時期)を抑制する事が
出来る女性ホルモンを生産する卵巣と子宮を摘出するので、卵巣がんや子宮内膜炎
・子宮蓄膿症を抑制し、乳腺腫瘍の発生率を下げる事が出来ます。
1)手術を受ける時に全身麻酔を掛けなければならない事、これは非常に大きな
リスクになります。ご存知だと思いますが、麻酔は100%安全ではありません。
一般的な麻酔は、心肺機能や肝臓・腎臓などの排泄経路に問題が無く、麻酔薬
などの薬剤に対してアレルギーがなければ問題が起きる事はないと考えられます。
当院では可能な限り術前検査を行い、ペットの身体状況を確認した上で麻酔を
掛ける事を心がけています。過去にアレルギーを起こした事があるなど気になる事が
ありましたら、担当医までご相談下さい。
2)不妊手術後はオスもメスも食欲が増進し、また肉体的に以前よりも脂肪を貯め易く
なりますので太る傾向にあります。(精巣・卵巣より性ホルモン分泌がなくなる事に
より、他のホルモン産生が増進される事で起こると言われています)
ただこれはオヤツも含めた食事の総エネルギーをコントロールする事で、調節は
可能です。食欲があるから量を増やすのではなく、一定の体重を維持するために
与える量を調節する事で、健康な体を維持するよう心がけましょう。
卵巣・子宮は頭側が腎臓の背側腹膜に靭帯が付着し、
尾側が骨盤の手前で左右子宮が2本から1本に融合します。
切開創は臍(おへそ)から下に数cm、体の大きさに比例します。
摘出方法は卵巣の奥側で血管を結擦、根元は子宮頚管で
それぞれ医療用鋼線で2重結擦を行い、切除します。
閉腹方法は腹膜の内側・外側を吸収糸で縫合し皮下織を
隙間無く寄せて縫合後、皮膚を単純結節縫合します。
最後に絆創膏で傷口の保護を行います。
猫は切開創が少し骨盤方向になるだけで、術式は同じになります。
猫の去勢手術は当日の夕方5時以降に、それ以外は原則1泊の入院に
なりますので、翌日の10時以降の診察時間にお迎えにいらして下さい。
退院後の検診は5日後に一度絆創膏を剥がして縫合部部位のチェック、
その後5〜7日で抜糸を行うことが出来ます。
なお吸収糸による皮内縫合(=抜糸不要な縫合法)の場合は一度目の
チェックで診察は終了となります。
抜糸までの期間にペットが自分で絆創膏を剥がしてしまったり、絆創膏の
中から液体が染み出してくる時には注意が必要です。一度診察に訪れ、
縫合部の状態を見させて下さい。場合によってはエリザベスカラーの装着や
抗生剤や消炎剤の追加処方が必要になる事があります。
退院後のお散歩ですが、2〜3日は排泄程度、抜糸までは軽い運動に留め
シャンプーや激しい運動は2〜3週間様子をみて行って下さい。
不妊手術をする事により、統計学的に寿命が延びる事が確認されています。
しかしながら少なからず全身麻酔のリスクがある事も事実ですし、健康な
ペットの身体にメスを入れる事もけっして自然なことではありません。
ただ現在のペットを取り巻く環境を考えると、非計画的な繁殖が行われる事で
不幸にも毎年多数の仔犬・仔猫が行政で処分されている事も事実です。
人間がペットを飼う事で、そのような可哀想な事を引き起こしているのであれば、
飼う側の責任として、適切な時期に不妊手術を受けさせ、繁殖をコントロール
すべきだと考えます。誰にも愛される事なく、生きるチャンスも与えられずに
処分されてしまう、そんな命を増やさないためにも繁殖計画のないペットは
不妊手術を行う事をお勧め致します。